医師不在透析室 | - 2005/05/03
- 医師不在透析室@
何度かBBSに書きましたが、山羊先生のブログhttp://dr-goat.at.webry.info/ に約束してしまいましたので? こちらで書いてみることにします。医師不在透析になった理由はいくつか考えられますが、思いつくままに書いて見ます。
黎明期のHDは医師・その他のスタッフ皆が手探りでやっていました。医師自身が、セロファン膜を張っていた時代も有りました。 時間が作れず、日常業務の後に夜間だけHDをしていたような所も有ったそうです。ある程度技術的に安定してきた所で、医師は重点的に居ればよく、後は看護師、テクニシャン(今の臨床工学技士) に治療中は維持してもらえるようになって来ました。 医師は、当時不足がちで他にも仕事を押し付けられ、透析室にずっと居るというわけにはいかなかったでしょう。 しかし、現場のスタッフは、満足な教科書も無いなかできちんと教育され、同じ目標を持ち、有る程度の独立性と責任を持って仕事を任されていたはずです。 除水コントローラーの無い時代は、患者ごとに除水のモノグラムがあり、迂闊に血流量をいじることなどは出来ず、すべてテクニシャン任せの所もありました。 医師がオーダーを出しても、間に誰かの作業が無いと治療目的は達成できませんでした。 いい意味でチーム医療がなされていた時代でした。今は、ダイアルやデジタルの設定をかまうだけで、狙ったとおりの治療が出来ます。隔世の感がありますね。
その後に透析に関わるようになった医師たちは、透析室は技師と看護師でメンテナンスできるのだと思うようになりました。 初期にたたき上げられたスタッフが残っていれば、新入りの医師など比較になりませんから、あながち間違いでもなかったかもしれません。私も透析の研修時代はただ単にスタッフの言いつけどおりに動いていました。現場の事は、スタッフに教育してもらっていたわけです。 まじめな施設は引き続き新しい治療概念を取り入れ、実行していきます。その場にはやはり医師がいて、スタッフの総力を纏め上げなければ新しいことは達成できません。そういう歴史の有る所は透析室から医師がいなくなることは無かったでしょう。スタッフも研鑽に勤め医師の治療目的をバックアップしますからお互いの協力関係は引き続き醸成されていきます。そういった中で、やる気の有る医師が増えるとともに、患者数も増え施設も拡充していった所も有ります。 医師、スタッフ、患者すべてが満足できる治療環境が整っていきます。
一方、透析治療が莫大な売り上げが保障されるようになると、より規模の大きい透析室を作るようになった施設もあります。 医師一人に付き何人の患者までは診られるなどという概念はありません。スタッフさえ増やしていけば透析患者は幾らでも診られると思ったのでしょう。そういう所では医師は新しい治療法の導入など考えもしないし、患者と触れ合うことも無く、話もすることも無く治療が進んでいきます。ある程度の決め事だけ作り、患者の事はスタッフが全部解決すべしという雰囲気の施設が増えていきました。医者は札束を数え施設の拡大のみに興味を示します。苦しむのはスタッフと患者だけになります。スタッフと患者は強く結びつき、医師は榧の外になります。当然の結末です。 経営者が規模拡大を図るのは未だ良い方で、それなりにスタッフも増え(雇用を増やし)、患者も治療の機会が増えれば社会に貢献している側面は有ります。
そこまで考えず、実行せず、自分ひとりの代で終わりにするつもりで、余生を遅れるだけのものが溜まればそれで良しという小規模施設も沢山出ました。 20-30年の間、20-50人程度の透析患者を診ていれば蔵が立ちました。スタッフも代わり映えしないし、研鑽にいそしむことも無い、10-20年前の知識と患者を脅す能力だけで仕事が出来てしまう。他の施設よりは破格に給料が良いので絶対にやめない。そういう施設も有りました。
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